予想や仮説を設定する場面において想定される児童のつまずきとそれに対する評価方法について

理科教育 Advent Calendar 2019の24日目の記事です。
この記事は下記拙稿の紹介です。

雲財寛(2019)「予想や仮説を発想する力の評価~児童のつまずきの評価を中心に~」『初等理科教育』51(5), 23-26.

上の記事では,児童のつまずきを発見するという視点から,予想や仮説を設定する力の評価の方法について解説しています。つまずきにも色々種類はあると思いますが,予想や仮説を設定する場面において想定される児童のつまずきとして,次の3点を例に挙げています。

(1)仮説の設定に必要な既習の内容が想起できていない(知識想起のつまずき)
(2)仮説を設定するための思考方略が身についていない(思考方略のつまずき)
(3)「仮説」として何を書けばいいのかがわかっていない(仮説の条件に関するつまずき)

もう少し具体的に説明すると,(1)は仮説を設定するために必要な知識をそもそも知らない,理解していない,思い出せないというつまずきです。問題を説明するための「ネタ」がないとそもそも仮説を設定することはできません。(2)は仮説を考えるための「考え方」が習得できていないというつまずきです。ただやみくもに考えても質の髙い仮説を設定することはできません。(3)は(2)と関連しますが,どのような条件を満たせば「仮説」となるのか,仮説の条件がわかっていないというつまずきです。たとえば,問題を説明する内容となっていなければ,その問題に対する仮説とはいえません。
拙稿では,これらのつまずきを明らかにするための評価方法の一例を紹介しています。
具体的には,下記の通りです。

(1)知識想起のつまずき
→ペーパーテスト形式の問題

(2)思考方略のつまずき
→思考過程に着目した問題(中村・雲財,2017)

(3)仮説の条件に関するつまずき
→仮説の条件を問う問題(たとえば,「理科の授業で,仮説を書くときにはどのようなことに気をつけて書く必要がありますか」など)

全部説明するとあれなので,ここでは,あまり見慣れないであろう(個人の感想です)(3)について説明します。
仮説の条件として,ここでは「問題となる現象を説明または予測していること」,「その言及には根拠があること」を例に挙げています。そして,これら仮説の条件に関する知識を問う評価問題として,直接的な評価問題と間接的な評価問題の2つを紹介しています。

直接的な評価問題では,「理科の授業で,仮説を書くときにはどのようなことに気をつけて書く必要がありますか」といった教示のもとで,自由に書かせます。直接的ですね。

一方,間接的な評価問題では,問題に対して説明していない仮説を示し,それが「仮説」といえるのかを判断させます。たとえば,「電磁石を強くするためにはどのようにすればよいか」という問題に対して,Aさんの仮説として,「電磁石が強くなると,より多くのクリップがくっつくだろう」という問題に対して説明していない仮説?を示します。そして,「Aさんの意見は『仮説』といえるでしょうか。仮説といえないのであれば,その理由を書きましょう。」といった教示のもとで,正誤の判断とその理由を書かせます。この回答から,「問題となる現象を説明・または予測していること」という仮説の条件に関する知識の有無の実態を明らかにすることができます。

以上,簡単ではありますが,つまずきの評価方法について示してきました。
あくまで上記の方法は一例です。他にも色々な方法があると思います。
拙稿では,上記の(1)や(2)についてもう少し詳しく紹介しています。
興味のある方はご覧いただければ幸いです。

引用・参考文献

中村大輝・雲財寛(2017)「仮説設定能力の評価に関する基礎的研究」『日本科学教育学会研究会研究報告』32(5), 111-116.
雲財寛(2019)「予想や仮説を発想する力の評価~児童のつまずきの評価を中心に~」『初等理科教育』51(5), 23-26.


タイトルとURLをコピーしました