日本理科教育学会が編集した本とその目次をまとめてみた

日本の理科教育学研究のこれまでの歩みを調べようと思い,タイトル通り,日本理科教育学会が編集した本とその目次をまとめてみました。
日本の理科教育学の俯瞰する際の一助となれば幸いです。
初学者のテーマ探しなんかにも使ってもらえると嬉しいです。
なお,目次は全てWeb上から国立国会図書館オンラインの書誌情報や公式HPから引用しています。

調べ方

2019年11月24日に下記方法にて検索しました。
・Amazonで「日本理科教育学会」で検索
・国立国会図書館オンラインの詳細検索の「著者・編者」に「日本理科教育学会」で検索

結果

全部で24件がヒットしました。具体的には下記の通りです。「書名(西暦)」で示しています。
以下に,目次と簡単なコメントを付していきます。

・理科実験観察指導講座【シリーズ本:全4巻】(1955)
・現代理科教育体系【シリーズ本:全6巻】(1978)
・理科教育学講座【シリーズ本:全10巻】(1992)
・キーワードから探るこれからの理科教育(1998)
・これからの理科授業実践への提案(理科ハンドブック1)(2002)
・これからの理科学習を支える教材(理科ハンドブック2)(2002)
・今こそ理科の学力を問う(2012)

詳細

書名:理科実験観察指導講座【シリーズ本:全4巻】
出版年:1955
出版社:東洋館出版社

日本理科教育学会が編集したおそらく最古?の本。
日本理科教育学会が発足したのが1952年なので,発足後わずか3年で出版ということになります。(すごい!)
リンクから国立国会図書館オンラインの書誌情報にジャンプできます。
より詳しい目次を見たい方はリンクからどうぞ。

第1巻
第1編 序論
 第1章 理科の学習における実験観察の意義と役割
 第2章 実験・観察の学習形態
 第3章 実験・観察の指導法
第2編 基礎的技術
 第1章 測定
 第2章 ガラス細工
 第3章 薬品の調製と取扱方
 第4章 簡単な工作
 第5章 機械・器具操作
 第6章 製図と描画
 第7章 解剖
 第8章 生物の標本の作り方
 第9章 器具の手入れ

第2巻
A.生產活動
 第1章 電気の利用
 第2章 機械
 第3章 金属とその利用
 第4章 化学変化とその利用
 第5章 食品加工

B.消費活動
 第1章 熱の利用
 第2章 光の利用
 第3章 衣食住の材料の利用

C.保健衛生活動
 第1章 食物
 第2章 被服と住居
 第3章 病気の予防

D.分配活動
 第1章 通信

第3巻
D.分配活動
 第2章 輸送

E.自然の保護と利用
 第1章 栽培
 第2章 飼育
 第3章 品種の改良
 第4章 採集と標本の作り方
 第5章 天然資源
 第6章 災害の予知と予防
F.教養活動
 第1章 天体観測
 第2章 自然の観察
 第3章 音の利用
 第4章 科学あそび

第4巻
第4編 実験・観察と学習活動
 第1章 実験・観察と訪問見学
 第2章 実験・観察と教科以外の活動
 第3章 実験・観察と視聴覚教具・図書
 第4章 実験・観察の整理発表技術
 第5章 施設・設備および管理
 第6章 危険の予防と処置

理科年表

国立国会図書館オンラインの書誌情報ページをもとに作成。URLは上記リンク参照。

現代理科教育体系【シリーズ本:全6巻】
出版年:1978
出版社:東洋館出版社

1978年に出版されたシリーズ本です。全6巻。
「体系」というタイトル通り,幅広い領域がカバーされていることがわかります。
特に興味深かったのが,第5巻のタイトルの「理科授業の科学化と授業研究」です。
「科学化」に関する議論は,理科に限らずどのような教科でもつきものだと思います。
このタイトルから,当時の先人達の課題意識を感じ取ることができます

Web上では目次は公開されていないようなので,巻のタイトルのみです。

第1巻 理科教育の発展,理科の学習指導要領及び教科書の変遷
第2巻 理科教育の目的と目標・理科の教育計画
第3巻 理科学習論の動向
第4巻 子どもの発達と理科指導,理科の学習評価,理科経営の現代化
第5巻 理科授業の科学化と授業研究,教育機器の活用による理科授業の改善,理科における研究と調査
第6巻 実験観察とその指導

国立国会図書館オンラインの書誌情報ページをもとに作成。

理科教育学講座【シリーズ本:全10巻】
出版年:1992
出版社:東洋館出版社

1992年に出版されたシリーズ本です。全10巻。
過去の著作に比べ,さらに巻数,頁数が増えています。
心理学系の知見が多く取り上げられている印象です。
リンクから東洋館の紹介ページにジャンプできます。

第1巻 (理科の目標と教育課程)
 第1章 理科の目的・目標の変遷
 第2章 今日の理科の目標と教育課程
 第3章 教育課程編成の視点と方法

第2巻 (発達と科学概念形成)
 第1章 発達と自然認識
 第2章 科学概念の構造と理科教育
 第3章 科学概念の形成

第3巻 (理科の授業と学習の成立)
 第1章 理科学習指導と方法
 第2章 理科の授業の科学化とシステム化
 第3章 理科の学習指導計画と授業の実践

第4巻 (理科の学習論 上)
 第1章 学習論の変遷
 第2章 行動主義的学習論
 第3章 問題解決学習論

第5巻 (理科の学習論 下)
 第1章 探究学習論
 第2章 構成主義学習論
 第3章 総合学習論と理科教育

第6巻 (理科教材論 上)
※第6巻のみ目次が公開されていませんでした。

第7巻 (理科教材論 下)
 第1章 物理教材論
 第2章 化学教材論
 第3章 生物教材論
 第4章 地学教材論

第8巻 (理科の学習環境と教具)
 第1章 学習環境整備の視点と実際
 第2章 教具の整備と開発
 第3章 理科の学習環境の活用と安全指導

第9巻 (情報科社会と理科教育)
 第1章 情報化社会における理科教育
 第2章 理科教育とニューメディア
 第3章 理科教育におけるコンピュータの利用

第10巻 (理科の評価)
 第1章 理科教育における評価
 第2章 理科における評価の方法

東洋館出版社の書籍詳細リンクから作成。 URLは上記リンク参照。

書名:キーワードから探るこれからの理科教育
出版年:1998
出版社:東洋館出版社

1998年に出版された本です。出版社のリンクはこちら
目標論,カリキュラム論,学習論,指導方法論,評価論について,コンパクトにまとめられています。

第0章 理科教育を考える基本
第1章 理科教育の目指すもの(目標論)
第2章 新しい理科の学習内容の構成(カリキュラム論)
第3章 子どもの論理構成を探る(学習論)
第4章 子どもの学びを支援する理論(指導方法論)
第5章 子どもの学びの価値づけと発展(評価論)

東洋館出版社の書籍詳細リンクから作成。

書名:これからの理科授業実践への提案(理科ハンドブック1)
出版年:2002
出版社:東洋館出版社

2002年に出版された本です。出版社のリンクはこちら
次の『これからの理科授業実践への教材(理科ハンドブック2)』とセットになっています。

第1章 理科の学習論
 ・メタファ表現から見た学びの構造
 ・素朴概念から見た学びの構造 ほか

第2章 理科の教授論
 ・動機づけと子どもの学び
 ・自由試行の設定による子どもの学びの広がりとその実践 ほか

第3章 理科のカリキュラム論
 ・諸外国における科学カリキュラムの動向-アメリカとオーストラリアを中心として
 ・科学論とカリキュラム構成 ほか

第4章 理科の学習評価論
 ・主体的な学びを促す自己評価方策とその実践
 ・概念地図法による学びの評価とその実践 ほか

第5章 理科の教材内容構成論
 ・文化的な物理教育への誘いを
 ・自然科学と化学
 ・理科教育と化学教育 ほか

東洋館出版社の書籍詳細リンクから作成。

書名:これからの理科学習を支える教材(理科ハンドブック2)
出版年:2002
出版社:東洋館出版社

2002年に出版された本その2です。出版社のリンクはこちら
さきほど紹介した本と違って,教材に特化しているのが特徴的です。

身近な野外学習のための教材
楽しいものづくり教材
総合的な学習のための教材
飼育・栽培のための身近な教材
身近な素材を生かした教材
身近で発展性のある教材
やさしい環境教育のための教材
コンピュータを活用した教材
インターネットを活用した教材
地域の素材を生かした教材
国際理解のための教材
自由研究のための教材
課題研究のための教材
選択学習のための教材
社会教育施設に見る教材
危険防止と防災教育のための教材

東洋館出版社の書籍詳細リンクから作成。

書名:今こそ理科の学力を問う
出版年:2012
出版社:東洋館出版社

2012年に出版された本です。出版社のリンクはこちら
現時点(2019/11/24)で最も新しい本です。
学力に着目していること,国際調査に関する内容が入っているのが特徴的です。

はじめに

第1章 学力調査から見た日本における理科の学力
 第1節 国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)
 第2節 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)
 第3節 ROSE国際調査
     -科学・科学技術への興味・関心や態度,生活経験を探る-
 第4節 理数長期追跡研究・理数定点調査研究

第2章 諸外国が考える科学の学力 
 第1節 アメリカにおける科学の学力の捉え方
 第2節 イギリスにおける科学の学力の捉え方
 第3節 ドイツにおける科学の学力の捉え方
 第4節 フランスにおける科学の学力の捉え方
 第5節 フィンランドにおける科学の学力の捉え方
 第6節 韓国における科学の学力の捉え方
 第7節 中国における科学の学力の捉え方
 第8節 台湾における科学の学力の捉え方
 第9節 シンガポールにおける科学の学力の捉え方

第3章 現代の理科の教育課程が目指す学力
 第1節 小学校の教育課程が目指す学力
 第2節 中学校の教育課程が目指す学力
 第3節 高等学校の教育課程が目指す学力
 第4節 教員養成・現職教育の目指す教師の学力

第4章 教授学習論から見た理科の学力保障
 第1節 自己調整学習のもとでの科学概念変換
 第2節 科学観と理科学習
     -科学の本質と理科学力-
 第3節 メタ認知
 第4節 ニューラルネットワーク
 第5節 才能教育
     -児童生徒の多様なニーズに応じる理科教育の新展開-
 第6節 自然体験
 第7節 問題解決
 第8節 協同学習・協調学習
 第9節 学び合い
 第10節 外化・外的資源
 第11節 ラーニング・プログレッションズ
 第12節 テクノロジーの活用

第5章 理科の学習評価で捉える学力
 第1節 アセスメントとエバリュエーション
 第2節 見えやすい学力・見えにくい学力
 第3節 確かな学力と目標に準拠した評価
 第4節 観点別学習状況と評価の4観点
 第5節 理科学習の成果を読み取るための評価規準
 第6節 パフォーマンス評価・パフォーマンス課題
 第7節 真正の評価(authentic assessment)
 第8節 ポートフォリオ評価
 第9節 概念地図法
 第10節 描画法
 第11節 運勢ライン法

第6章 学力をはぐくむ特色ある理科の授業実践
 第1節 子どもの表現をもとに学び合い、知を更新する授業
     -小学校の授業実践-
 第2節 ルーブリックの開発に基づく理科授業のデザイン
     -小学校第5学年「物の溶け方」を通して-
 第3節 小中一貫した理科の授業実践
 第4節 生きて働く理科の学力
     -中学校の授業実践-
 第5節 言語活動の充実を図った単元全体の「振り返り」活動
     -高等学校におけるコンセプトマップ法の導入-
 第6節 高校生の考える力をはぐくむ授業展開の実践

東洋館出版社の書籍詳細リンクから作成。

番外編

そのほか,初学者に役立ちそうな理科教育学の本を紹介します。

書名:<重要用語300の基礎知識 6巻>理科重要用語300の基礎知識
出版年:2000年
編者:竹村重和,秋山幹雄
出版社:明治図書

理科に関する用語が網羅的に記載されています。出版社のリンクはこちら
1用語1頁で読みやすいです。

Ⅰ 理科の教育原理と歴史
Ⅱ 理科の目標と内容
Ⅲ 理科の教育方法
Ⅳ 理科の学習と認知
Ⅴ 理科の学習評価
Ⅵ 観察・実験と安全指導
Ⅶ 理科の施設・設備
Ⅷ 理科関連法令・その他

明治図書ONLINEのリンクから作成。

おわりに

以上,日本理科教育学会がこれまでに編集した本などを紹介してきました。
もし,抜けている文献がありましたら,ご一報いただけると助かります。

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